設計:ノエル・ピカペール/Onomiau
企画:ヴィラ九条山、アンスティチュ・フランセ、ベタンクール・シュラー財団、有楽町アートアーバニズムYAU、東京藝術大学
設計・制作協力:蘆田暢人建築設計事務所
制作:松本家具製作所
協力:三菱地所
このプロジェクトは、ヴィラ九条山のポスト・レジデンス・プログラムとして実施されており、アンスティチュ・フランセパリ本部、アンスティチュ・フランセ、ベタンクールシュエーラー財団の支援を受けています。
© Noël Picaper / Onomiau
自然における流れ、動植物や微生物、人、人工物、データ…私たちの生きる世界にはさまざまなストリームズ(流れ)が存在し、それらが関係することで生成変化をし続けています。本展では、そのような流れを、とりわけ水や空気に注目し可視化・可聴化する作品を紹介します。作品に出会い、そして日仏学院の屋内外を散策してみてください。時間や空間を超えて偏在するものや非生物と見なされているものとの新たな関係が始まることでしょう。
会期
2025年5月23日(金)~6月15日(日)
※5月23日(金)19時よりオープニングレセプションを開催
※石橋友也による展示はワークインプログレスで5月11日より公開中
※ノエル・ピカペールのMOHITORIプロジェクト紹介展も同時開催
会場
東京日仏学院|坂倉館ホール、藤本館ホール、リヴ・ドロワット、坂倉塔、他
時間
火曜~土曜:11時~19時(日曜は17時まで)
月曜・祝日 休廊
※5/23(金)、5/30(金)、5/31(土)は21時まで開廊
入場
無料
お問合せ
東京日仏学院
川で拾ったゴミや自然物で顕微鏡を自作し、その川の水を観察する《Self-reference Microscope》に、東京日仏学院の近くを流れる神田川の上流で採集した素材による新作《神田上水顕微鏡》と、神田川にゆかりのある松尾芭蕉の句を学習したAIが顕微鏡観察画像をもとに生成した俳句で構成。人新世の東京を起点に、環境、生物学、詩、歴史、科学技術がアートを通して交差する。自然に分け入りながらも自然を対象化し、そこに詩を生成させていく石橋は、自己言及的な観察者かつ詩人であり、「Microscopique Poésie」を体現している。
【展示作品】
・《Self-reference Microscope》(2025)(助成:令和6年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業)
・《神田上水顕微鏡》(新作)
・《群れ遊ぶ影の無言や夏の月》(新作)(AIエンジニア/アーティスト新倉健人との共同制作)
インストーラー:塩澄祥大
アーティスト
石橋友也
1990年埼玉県生まれ。大学では生物学を学ぶ。品種改良種、文字、人工知能などへの関心に基づき、自然と人為の境界を探索する芸術実践を行う。近年は、生家の周辺である荒川流域のリサーチに基づいた制作を展開。2012年より早稲田大学生命美学プラットフォーム「metaPhorest」に所属。2023年IAMAS博士後期課程入学。近年参加した展示に「IAMAS ARTIST FILE #10 繭/COCOON:技術から思考するエコロジー」(岐阜県美術館, 2025)、「遍在、不死、メタモルフォーゼ」(京都瑞雲庵, 2024)、「DISTANT VIEW」(Mars Frankfurt, 2024)など。
大小島真木と辻陽介は、2022年長野県諏訪での滞在調査後、同地の神話、信仰、民俗などに触発され、性愛、捕食、屠殺、葬送という生命の営為がもつ両義性を創作神話とした初の映像作品『千⿅頭 CHIKATO』(2023)を制作した。狩猟神ともされる古代諏訪の「千⿅頭神」に由来する映像では、水源の老人と森の精、森の民と巫女、旅人と謎の女、人と鹿など人間と非人間をつなぐ複数の物語が展開する(大小島と辻は、本作を機にユニット「大小島真木」へと変態)。映像、絵画、陶器、テキストなど多様なメディアで構成された本インスタレーションは、『千⿅頭 CHIKATO』の背景とコンセプト―彼らが「根源的な不能性(Radical Impotency)」と呼ぶ、日本列島が背負ってきた精神性―を充満させている。「災害列島で暮らしてきた民が、自然の猛威を前に抱いてきた無力感、「何もしえなさ」」(大小島真木/ユニット)はしかし、作品に散りばめられた「胞衣(えな)」のモチーフによって「再生」への祈りを内包する。
映像: 37分44秒(ループ)
協力:対話と創造の森、ヴィジュアルフォークロア
ナレーション録音:大川数斗/LLLL
会場音楽:Curtis Tamm
機材プログラミング:田中啓介
3DCG : 荒木和也、石田重行
設営協力:菊永絢音
アートユニット
大小島真木
東京を拠点に活動する、大小島真木、辻陽介の二人によるアートユニット。 「絡まり、もつれ、ほころびながら、いびつに循環していく生命」をテーマに制作活動を行う。
【大小島真木】1987年東京都生まれ。現代美術家。インド、ポーランド、中国、メキシコ、フランスなどで滞在制作。2014年にVOCA奨励賞を受賞。2017年にはアニエスベーが支援するTara Ocean 財団が率いる科学探査船タラ号太平洋プロジェクトに参加。近年は美術館、ギャラリーなどにおける展示の他、舞台美術なども手掛ける。主な出版物として「鯨の目(museum shop T)」など。
【辻陽介】1983年東京都生まれ。編集者、文筆家として雑誌『STUDIO VOICE』の他、様々なメディアに関わる。文化の土壌を耕すウェブメディア《DOZiNE》を主宰。2020年頃より大小島真木の美術作品制作に関わるようになり、2023年以降は正式にアートユニットとして活動している。
© Aki Kawakami
藤倉は、都市や郊外、そして自然など人為的に開発された環境や物理的なインフラ、通常殺伐とした風景と見なされる場所、浅瀬など陸と水の関係が常に変動する境界領域やそこに生息する生物、開発の歴史などに興味を抱き3DCG映像やオブジェによるインスタレーションを発表してきた。物理的な構造物や仮想の存在がヴィヴィッドな色彩で登場し現れ(まるで意志を持つ存在のように)、風景が独自のアングルやパン、構成で展開する映像、仮想空間から抜け出たかのようなオブジェたちは、藤倉ならではのシュールな世界として確立している。本インスタレーションでは、数年来水への興味を持ち制作してきた藤倉が、以下の作品における水に関する要素を抽出し、新たなハイブリッドとして披露する。2022年に東京湾で開催したプロジェクト「手前の崖のパンプール」(大村高広らとの共作)の記録および関連映像(2022)、《砂地の運びタイヤ》(2022年)。
企画・映像・ディレクション:藤倉麻子
会場構成・美術・企画補助:大村高広
ガイダンス:Aokid
調査・執筆:近藤亮介
調査・地図:齋藤直紀
撮影監督:佐藤友理
撮影:磯崎未菜
記録写真撮影:太田琢人
広報:金子瑞葉
ラジオの声:近藤亮介・齋藤直紀・藤倉麻子
協力:東海海運株式会社、東京ウォータータクシー株式会社
助成:アーツカウンシル東京
アーティスト
藤倉麻子
1992年生まれ。都市・郊外を横断的に整備するインフラストラクチャーやそれらに付属する風景の奥行きに注目し、主に3DCGアニメーションの手法を用いた作品を制作。近年では、埋立地で日々繰り広げられている物流のダイナミズムと都市における庭の出現に注目した空間表現を展開している。近年の展覧会に「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」(森美術館、2025)、第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示「IN-BETWEEN(中立点)—生成AIと未来」(2025)などがある。
坂倉準三による坂倉館(1951)、10年後の増築、そして約60年後の藤本壮介による増築が中庭を囲んでいる。都心ながら自然が豊かなこの場所は、屋内外を階段やスロープがなだらかに結び、歩けば多様な景色とともに風や木々や鳥、電車音など様々な流れが体感できる。坂倉館の二重螺旋階段から構想された本作では、独立しつつ絡み合う二つの螺旋空間の流れに加え、螺旋階段と外の流れが出会う。自然音が二重螺旋空間へ、自然の中に二重螺旋空間の音が流出し、自然と人工、意識と無意識の境目がほぐれていく。人間は世界を見聞きしているが、世界から見られ聞かれている。本作では、訪れた者もその一部となり内耳の螺旋へ音を受け入れていく。自然に見られる螺旋の流れ、森羅万象の生成原理がつながり、私たちは世界そして自らがLiving Room(生きた空間)であることを発見する。
螺旋階段が二つあります。表側の階段からは、屋外に設置された3つのマイクからの音が聴こえています。裏側の階段にはマイクが設置されており、私たち人間の音が、藤本館(F311教室の左側の手すり)に設置されたスピーカーから自然に聴かれています。
技術統括:岩田拓朗(arsaffix Inc.)
インストール/再生システム:村川龍司(arsaffix Inc.)
デバイス/音声伝送システム:安藤充人
Special Thanks:山峰潤也、松井正(長野県立美術館)、イトウユウヤ(arsaffix Inc.)、伊藤隆之
機材協力:株式会社ATL-KYOEI
アーティスト
細井美裕
1993年生まれ。多重録音作品のほか、マルチチャンネル音響をもちいたサウンドインスタレーションや舞台作品など、空間の認識や状況を変容させる音に焦点を当てた制作を行う。これまでの展示に長野県立美術館、愛知県芸術劇場、日比谷公園、ロームシアター京都、国際音響学会、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、山口情報芸術センター[YCAM]など。2025年IRCAM(フランス国立音響研究所)、バービカン・センター(ロンドン)にて作品を発表。
© So Mitsuya
キュレーター
四方幸子
キュレーター、批評家。十和田市現代美術館館長、美術評論家連盟会長、「対話と創造の森」アーティスティックディレクター。多摩美術大学・東京造形大学客員教授、武蔵野美術大学・情報科学芸術大学院大学(IAMAS)・京都芸術大学非常勤講師。「情報フロー」というアプローチから諸領域を横断する活動を展開。1990年代よりキヤノン・アートラボ)、森美術館、NTT ICC(いずれもキュレーター)と並行し、インディペンデントで先進的な展覧会やプロジェクトを多く実現。国内外の審査員を歴任。著書に『エコゾフィック・アート 自然・精神・社会をつなぐアート論』(2023)、共著多数。
© Kenshu Shintsubo
フランスのアーティストレジデンスヴィラ九条山(京都)と、有楽町アートアーバニズムYAUとのパートナシッププログラムとして、東京・大手町のホトリア広場にて建築家・ノエル・ピカペールのパビリオン展示を実施します。
2024年にヴィラ九条山に滞在したノエル・ピカペールは、YAUのサポートのもと、東京でのリサーチも行いました。そこでは日本の伝統的な建材である「焼杉」の技術など、日本において建築と火の間に存在する関係を探求しました。
本展覧会では東京藝術大学主催の野良展示とも連携し、大手町・丸の内・有楽町のエリアの重なりと、水の巡り、そして雨樋や階段、屋根といった日常の建築のかけらとの対話を紡ぐ装置として、小規模な建築物『野良展示0.0–MOHITORIパビリオン–』を構想。親密なスケールの中にたたずみながら、都市と自然のあいだに流れる気配を、行き交う人々にそっと問いかけるパビリオンが屋外展示されます。
さらに模型やパネル、デッサン等で「MOHITORI」プロジェクトを紹介する展示が東京日仏学院で同時開催されます(会期:5月23日~6月15日)。また5月31日(土)には、ノエル・ピカペール、森純平(東京藝術大学/YAU)、大村高広によるトークイベントが東京日仏学院にて開催されます。トークの情報はこちら
会期
2025年5月30日(金)~6月15日(日)
※終了時期は場合により早まる可能性あり
※東京日仏学院でのプロジェクト紹介展は5月23日~6月15日
会場
ホトリア広場(東京都千代田区大手町1-1-1)
時間
会期中は自由に観覧可能
設計:ノエル・ピカペール/Onomiau
企画:ヴィラ九条山、アンスティチュ・フランセ、ベタンクール・シュラー財団、有楽町アートアーバニズムYAU、東京藝術大学
設計・制作協力:蘆田暢人建築設計事務所
制作:松本家具製作所
協力:三菱地所
このプロジェクトは、ヴィラ九条山のポスト・レジデンス・プログラムとして実施されており、アンスティチュ・フランセパリ本部、アンスティチュ・フランセ、ベタンクールシュエーラー財団の支援を受けています。
© Noël Picaper / Onomiau
建築家
ノエル・ピカペール
建築家。2024年ヴィラ九条山レジデント。2016年、ストラスブール国立高等建築学院を卒業。スイス、日本とフランスで経験を積んだ後、2019年に建築事務所《Onomiau》を設立。公共空間に設置される東屋、民間プロジェクトの設計監理、都市・景観設計、展覧会、教育、フィクションなど、様々な分野の間を行き来している。
儀式や地球のサイクルに敏感なノエル・ピカペールはそのリサーチの一部を風変わりな建築を編み出すことに割り当てている。それは、短い間、場所の性質を高め、その場所の利用者を探検家に変身させる建築である。ささやかな規模であることが多いこうした構造物は、世界を凝縮することに適用され、その脆弱性を本質的な要素として引き受けるものである。構造物の位置と公共空間への組み入れられ方、またそれが始動する教育的側面は、地域レベルで共鳴することのできる空間を生み出す。構造物は亡霊のように立ち現れたり消えたりし、慎み深く、時には目に見ないが、しかし重要な現在の痕跡を残していく。
© Onomiau