第4回「デジタル・ショック」- リアルのファクトリー
第4回「デジタル・ショック」-リアルのファクトリーが2月13日(金)から3月22日(日)まで、アンスティチュ・フランセ東京と関西をメイン会場に開催されます。今回は現実を別の角度から理解したり、創造したりできる新技術の活用法に焦点が置かれます。
第4回目を迎える「デジタル・ショック」は、デジタルアートからビデオゲーム産業、アニメーション映画やエレクトロニック・ミュージックに至るまで、新しいメディアの影響を受けた幅広い分野での、日仏協力と創造性の広がりをご紹介します。
アンスティチュ・フランセ日本は、本年度も多くのパートナーの皆様と共に、ヴァーチャル・リアリティーや3D印刷、生命科学などの新しい技術を介 し、これまでとは違ったアプローチで現実を理解する方法を観客の皆様に提案いたします。私たちひとりひとりが、新しいツールを使って現実を再創造していく 方法に重点をおいたプログラムです。
過去3回のフェスティバルでは、日本全国から来場した1万人以上の方々に、ビジュアル・アート、建築、ビデオゲーム、パフォーマンスなど、デジタ ルアートが関わる多様な領域を知っていただきました。さらに今年は、新技術と拡大する人間性を扱うハイレベルな日仏間の議論を行い、昨年度までの成功に貢 献してきた、新感覚の映像やデジタル・クリエーションの展望を、より完全な形にすることを目指します。
プログラム
- 2月13日(金): オープニング・レセプション
@東京日仏学院
- 2月14日(土):オープニング・ライブ Red Bull Music Academy x Digital Choc「Arigatô Tokyo, Bonjour Paris」〜Egyptology セレクション
@SuperDeluxe, 東京
出演
Crystal
OORUTAICHI + VJ SphinkS
Egyptology + Muneomi Senju (Para, ex-Boredoms) + Masaya Nakahara (Hair Stylistics)
AOKI Takamasa
2015年秋、パリにて開催される、若く才能溢れるアーティストたちを支援する世界的な音楽学校「レッドブル・ミュージック・アカデミー」のアプリケーション応募期間(2015年1月14日(水)~3月4日(水))にて、参加者を募るレクチャー&イベント。今、最も注目を集める気鋭のフランス・エレクトロニック・ミュージック・グループEgyptologyと、彼らがセレクトした日本人ミュージシャンたちによるスペシャルライブが東京と京都の二都市で開催されます。
Egyptology
オリヴィエ・ラムとステファン・ラポルトはそれぞれ、1990年代末のパリのエレクトロ・ミュージックシーンで名を知られるようになりました。彼らの共同プロジェクトである「エジプトロジー(エジプト学)」では、考古学的な知識で培われたビジョンで未来の世界を想像した20世紀のサイエンスフィクションが、回顧的に見直されます。彼らはお互いのティストの違いを活用し、合成音とハウス・ミュージックを巧みにミックスさせつつ、60年代の制作技術の影響を取り入れ、メロディアスなミックスサウンドを生み出しています。
- 2月16日(月):関西オープニングイベント
Red Bull Music Academy × Digital Choc × Granulr Agency Egyptology
@Club Métro, Kyoto
- イロ「トリアングル・イラシーブル」
2月20日 @東京日仏学院
2月22日 @京都日仏学院
昨秋約一ヶ月に渡って、
その参加者を募るワークショップ&イベントの一環として、
- 2月21日・22日 : Tokyo Demo Fest 2015
@東京日仏学院
80年代の終わりからヨーロッパを中心に続いているデモシーンと呼ばれるコンピュータサブカルチャーがあります。グラフィックスアーティスト、ミュージシャン、プログラマそれぞれが現代のコンピュータもしくは古いコンピュータを利用し、人々の常識を覆すようなアート表現を行います。 彼らの表現の幅は古いコンソールゲームのような音楽から最先端のビジュアルエフェクトまで様々です。デモシーンのイベントはデモパーティと呼ばれ作品制作の発表の場であり他の制作者との交流の場でもあります。TokyoDemoFestは日本で開かれる唯一のデモパーティです。前回のイベントでの多くの期待が集まり5回目の開催となります。
- CCMC 2015 – コンテンポラリー・コンピューター・ミュージック・コンサート2015
2月25日 @京都日仏学院
2月28日 @東京日仏学院
19年目を迎えたCCMC2015は今年も東京と関西での開催となります。フランスと日本のアクースマティック音楽を、アクースモニウム(マルチスピーカーシステム)で音を空間化させ、ライブ演奏します。今年はフランス人作曲家、レジス・ルヌアール・ラリヴィエール(1996年Ars Electonica賞)が来日し、レクチャーコンサートを東京と関西で行います。
レジス・ルヌアール・ラリヴィエール
1959年、フランスのパリで生まれる。1984年にAdac-GRMでジャック・ルジューヌとフィリップ・ミオンのワークショップを受け、アクースマティック音楽に開眼する。1990年より教壇に立ち、現在はパリ第7区立エリック・サティ音楽院と、ベルギーのモンス王立音楽院で教えている。作曲活動の傍ら、電子音響音楽の作曲家やシェフェールの音楽概念に関する文章も執筆。作品《Futaie》は1996年、アルスエレクトロニカ賞を受賞した。David Braunの映画作品「Polichinelle」(2007年)で音楽を担当した他、「語るアクロバット芸人」Audrey Barrin の舞台Bethsabéeの音楽を手がけた。彼女の次の舞台Désertéeeの音楽も現在準備中。
- 2月27日 : 討論会「健康、ハンディキャップ、高齢化、脆弱さ:新たな技術と拡大する人間性」
@東京大学駒場キャンパス18号館ホール
ディジタルショック・フェスティバルの一環として、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、東京大学HIS主催、協力東京大学教養学部学際科学科科学技術論コースにて2015年2月27日18:30より、東京大学駒場キャンパス18号館ホールにて、「健康、ハンディキャップ、高齢化、脆弱さ:新たな技術と拡大する人間性」と題する討論会を開催します。
哲学者、科学技術人類学者であり、「ホーキングInc.」(柏書房より邦訳)の著者でバークレー校客員フェローのエレーヌ・ミアレ氏が来日し、舘暲氏(東京大学名誉教授、慶應義塾大学 特別招聘教授)、吉田英一氏(産業技術総合研究所研究体長)、石原孝二氏(東京大学大学院総合文化研究科准教授)と議論を交わします。司会を務めるのは、嘉幡久敬氏(朝日新聞科学医療部)です。
ステファン・ホーキングの姿は機械で動き、コミュニケーションをとる人体のイメージとして世界的に知られていますが、この討論会においては、だんだんと曖昧になる人間とマシンとの境界線が引き起こす問題について考えます。
身体の限界、老齢化、ハンディキャップ、人間の脆弱さに直面した時、新たな技術に何ができるのでしょうか?人間と非人間なるものが混在する、マシンによる身体機能の拡張や「拡大した体」(エレーヌ・ミアレ)の未来をどう考えればよいでしょうか?ネットワークの時代における超人間の未来像について、また超人間主義がもたらす夢と幻想について、ユートピアと現実、哲学と科学の狭間で日仏討論会を開催します。
- 2月28日 ~ 3月29日 : オリヴィエ・ラツィ「東京乱建築」
@ギャラリー アツコバルー
フランス語で無秩序(アナーキー)と建築(アーキテクチャー)を組み合わせた造語、「アナーキーテクチャー」、また「乱建築」 。それをタイトルにしたデジタル写真で、ビジュアルアーティスト、オリヴィエ・ラツィは、私たちの現実空間の認識とその表象の間にズレを生み出します。世界中の都市で撮影した写真をいくつもの断片に切り取り、それらを組み合わせて再構築し、あれっと思わせる建築を作り出すことで、オリヴィエ・ラツィは私たちが日常的に目にしている都市風景の知覚に揺さぶりをかける不思議な都市空間を提示します。私たちが都市風景と思っているものとは何なのか、問いかける作品です。
- 17 mars : Les séries télévisées – rencontre avec Sandra Laugier
@Institut français de Tokyo
- 20 et 22 mars : Autours de Little Houdini de Cédric Babouche
@Institut français de Tokyo
オリヴィエ・ラツィ Olivier Ratsi
1972年パリ生まれ、パリで活動するビジュアルアーティスト。映像集団「AntiVJ」の共同設立者でありメンバー。現実経験や空間知覚の表象に基づいた作品制作を行う。ラツィは、客観的現実や時空間や物質を、実体のない情報という概念とみなし、新しい視点を観客と共有するために、こうした概念を通して不連続のプロセスを考案する。この不連続のプロセスは、私たちの現実認識を変容させ、客観的現実の中に「裂け目」を生じさせる。
ただし、暗示的かつ動揺を与えるこの「裂け目」は節度が保たれており、観客が自分の経験や文化を通して現実を主体的に再構成できるようになっている。時間や空間の手がかりを脱構築するような創作プロセスや、彼が研究開発したアナモルフォーズの技術装置は、事物の異なるありかたを明示することを目的とするのではなく、むしろ事物の基準に問いを投げかけることを目的としている。
New York Times誌から依頼を受けて制作した作品が同誌で紹介されたほか、カナダ(ElektraとMutek)、スイス(マッピング・フェスティバル)、韓国、台湾、中国(Festival Croisement)、メキシコ、ブラジル、フランス(Vidéoformes、Némo、Scopitone、Bains Numériques)といった世界中のデジタルアート・フェスティバルに参加。
2007年にANTIVJを共同設立。ANTIVJは、オーディオ・ビジュアル・プロジェクションや建築物を使ったパフォーマンス、ライト・イルミネーション等のプロジェクトを専門とするビジュアル・レーベルである。
展覧会・インスタレーション
2月13日(金)から3月22日まで
@東京日仏学院
- バルタザール・オキシエートル「第5の睡眠」
ビデオゲームと映画の中間にあるといえる「第5の睡眠」は、他にはない体験を提案するインスタレーションです。このインスタレーションの中では、人間の最も神秘的な器官である「脳」の中を旅することができます。観客はヘッドマウントディスプレイを装着し、目の前に作り出されていく3Dの世界の中を進みます。人間の体内に注入されたナノロボットを試行する実験プロジェクトに参加する、という設定のもと、観客であるあなたは少しずつ物語の中に組み込まれやがて主役となっていきます。患者の脳内という迷路の中では、あなたの選択の一つ一つが患者の運命を決定するのです。見たこともないような風景の中への稀有な旅をどうぞご体験ください。
バルタザール・オキシエートル Balthazar Auxietre
パリの国立装飾美術学校で学んだ後、トゥールコワンにあるル・フレノワ国立現代アート・スタジオを卒業。2006年より、旅や彷徨、そこから生じる他者性をテーマとする短編映画シリーズの制作を始める。ジャンルという概念を超えた映画作りを追求する彼の作品は、ドキュメンタリーとファンタジー映画の境界に位置づけられる。現在では、ゲームと映画が交差するような体験の研究を発展させ、バーチャルリアリティ作品を求める広い観客層にそれを提案することを目的として活動している。
- マルク・イッポン・ドゥ・ロンダ「スペース・カット-オーガニック・リフレクションズ」
「SPACE CUT」は、視覚と身体的感覚が、相互に作用し合う空間へと私たちを誘います。自然界の有機的な延長として着想された本作品は、周囲の風景に溶け込み、季節とともに変化するインスタレーション作品です。
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佐藤ジュリアン & ルイ・ドゥ・カストロ「デジタル・ネイチャー」
このライト・インスタレーションでは、自然の要素と人工的な光が共存する空間が出現します。幻想的に輝く竹は、まるで中から光を放っているかのようです。あらゆる要素が調和したこの空間において、自然から電子が生まれる様子を体験できるでしょう。
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BCL 「Oubiopo」
「Oubiopo(潜在的生物学工房)」は実用的な実験室のモデルであり、アーティスティックなアイデアモデルでもあります。21世紀、科学としての生物学は、自然界の生物の観察と分類という観測的視点により、一般に分析的なものであると考えられてきました。そして、DNAの二重螺旋構造が発見された時、生物学は情報科学へ移行していく事を意味しました。それは現在の遺伝子情報の解析や編集の技術へと至ります。近年の合成生物学は、新たな生命を組立てて創るなどの生物学へのエンジニア的アプローチで、生命の起源をつきとめることを目指していると言えるでしょう。
プロジェクトOubiopoは生物学の限界を超え、潜在的な可能性を追求することを目的としています。本展では、「バイオラボ」と「日本の屋台」というスタイルとの融合を目指し移動可能な実験室が展開されます。生物学実験室を作る必要なツールと基本的な器材を持つ”屋台実験室”として、キッチンバイオ、DIYバイオとDIWO(Do It With Others)バイオの精神を結合していきます。そして誰もが参加・共有できる場であり、生命への探求を ”楽しく” 実践できる場となるでしょう。
Oubiopoは造語であり、そのもとになっているのはフランス語の Oulipo > Ouvroir de littérature potentielle(潜在的文学工房)という1960年に数学者のフランソワ・ル・リヨネー (François Le Lionnais)を発起人として設立された文学グループの名称です。BCLはその”Oulipo”の概念をもとにプロジェクトを Ouvroir de biologie potentielle(潜在的生物学工房 )> Oubiopo と名付け、ツールとバイオメディアへの制約と規制について考察します。
BCLは、サイエンス、アート、デザインの領域を超えたコラボレーションを行うアーティスティック・リサーチ・フレームワーク。 2004年にGeorg Tremmel(ゲオアグ・トレメル)と福原志保によってイギリスにて立ち上げられた。2007年に活動拠点を東京に移し、InterCommunication Center(ICC)やアルスエレクトロニカなどの国内外のミュージアムやギャラリーでの展示やコラボレーションを行う。2014年に吉岡裕記とPhilipp Boeing が参加。特に、バイオテクノロジーの発展が与える社会へのインパクトや、水環境問題について焦点を当てている。また、それらにクリティカルに介し、閉ざされたテクノロジーを人々に開いていくことをミッションとしている。
- ビデオ・ゲーム展「リアルのファクトリー」
アンスティチュ・フランセ日本は、デジタル・カルチャーや新しい映像分野におけるフランスの創造性を紹介するフェスティバル、第4回「デジタル・ショック」を2月13日〜3月22日に開催いたします。今年は「リアルのファクトリー」というテーマのもと、フランスのビデオゲームがアンス ティチュ・フランセ東京にて紹介・展示されます。フランス・リール近郊にある、デジタル・クリエイティブ産業のための複合施設「ラ・プレーヌ・イマー ジュ」とのコラボレーションにより、フランスのビデオゲーム制作会社やアーティストの創造性を紹介しながら、ビデオゲームを実際に体験していただける機会 をご提供いたします。クリエーションや創意、イマジネーションやイノベーションの真髄を発見するだけでなく、フランスの多彩なビデオゲーム文化を、遊びな がら知っていただくことができるでしょう。
いまやビデオゲームはギークカルチャーの域を超え、コンテンポラリー・カルチャーにおいて欠くことのできない部分を占めています。もちろんビデオゲームは大衆娯楽でもありますが、遊ぶためのものである以外にも、様々なアートが結合し、最も普及の進んだ表現性に富むメディアのひ とつとなりました。ビデオゲームは現在そして明日の社会を映し出す鏡です。社会問題に積極的に関わりを持ちながら、私たちを引きつけてやまない芸術表現メ ディアのひとつです。
さらにビデオゲームは、様々な実験や未来の世界を予想するのに適した革新的産業のひとつでもあります。ビデオゲームが現実となるとき、ビデオゲームは画面から飛び出します。パブリック・スペースをゲームの新たなインターフェースへと、私たちの身体を コントローラーへと変容させ、人間とヴァーチャルとの間の相互作用に問いを投げかけます。ビデオゲームは他の芸術的世界の要素を用いながら諸芸術を超越 し、社会の様々な現象に取り組み、現実世界における産業の創造的で革新的な傾向を映し出します。このように、デザインやストーリー、創造性や高いインタラクティブ性を持つビデオゲームやインスタレーションは、ビデオゲームと現実世界の関係性を探求しているのだといえるでしょう。
- Aki Inomata 「やどかりに「やど」をわたしてみる」
「オブジェの系統学1.0」の関連イベントとして、Aki Inomataによる「やどかりに「やど」をわたしてみる」シリーズの作品展示を行います。
「ヤドカリはその身体の成長に伴い、より快適な「やど」を見つけると引っ越しを行う。時には力の強いヤドカリに「やど」を追い出され不当な交換に応じなくてはならないこともある。そこで、私の作った透明な「やど」をヤドカリに渡し、ヤドカリが気に入れば引っ越ししてもらった。「やど」には、世界各地の都市が象られている。
この作品は、在日フランス大使館の解体イベントの展覧会”No Man’s Land”(2009)への出展を期に、制作をスタートした。 在日フランス大使館の建物は2009年に解体され、隣接する土地に新しい大使館が建てられた。その旧在日フランス大使館の土地は、2009年10月まで「フランス」だったが、以後50年間「日本」になり、その後また「フランス」になるという。この話に衝撃を受け、ヤドカリの「やど」を引っ越しする習性へとイメージが飛躍した。 同じ土地であるにも関わらず、平和に国が入れ変わっている事実と、中身は同じでありながら、背負う「やど」によって、すっかり見た目が変わってしまうヤドカリには共通項を感じる。世界各地の都市を模した「やど」へと次々と引っ越しをするヤドカリは、国境を軽々と越えていくようにも見えた。一方で移民や難民、国籍の変更や移住といったことも想起させられる。
制作当初、球を丸くくり抜いただけのものをヤドカリに渡してみたが、ヤドカリから見向きもされず、CTスキャンで自然の貝殻の内部構造を計測し、3DCGで制作したデータを3Dプリンターで出力する手法を用いたことで、ヤドカリに選ばれる「やど」を制作することが出来た。」
(Aki Inomata)
AKI INOMATA
1983年 東京生まれ
2008年 東京藝術大学先端芸術表現科修了
主な個展に、HAMBURG ILLUSTRATED ENCYCLOPEDIA(FRISE、ハンブルク、ドイツ/2014)、犬の毛を私がまとい、私の髪を犬がまとう(HAGISO、東京/2014)他。
主なグループ展に、アルスエレクトロニカ フェスティバル(リンツ, オーストリア/2014)、撤収展 新・港区ハンマーヘッドスタジオ(横浜/2014)、おおがきビエンナーレLIFE to LIFE -生活から生命へ 生命から生活へ-(IAMAS/2013)、第15回 岡本太郎現代芸術賞展(川崎市岡本太郎美術館/2012)、No Man’s Land(旧在日フランス大使館/2009)他。