フランス文化を発信するイベント情報サイト

映画

【日本初上映】『悲しみと哀れみ—占領下にあったとあるフランスの街の記録』

【日本初上映】『悲しみと哀れみ—占領下にあったとあるフランスの街の記録』

日程

2025年10月4日(土)14時/10月11日(土)14時/10月18日(土)15:30/10月26日(日)12時

*第一部「崩壊」(121分)と第二部「選択」(127分)の間、15分の休憩あり

場所

東京日仏学院エスパス・イマージュ

料金

一律1,500円 Peatix にてチケット発売中

*窓口販売はございませんのでご注意下さい。

特集上映「戦後80年 日仏の交差する視線」にて、日本では長らく日の目を見ることがなかったマルセル・オフュルスの記念碑的ドキュメンタリー『悲しみと哀れみー占領下にあったとあるフランスの街の記録』を国内初上映します。歴史的忘却との闘いにおいて必見の本作は、世界的にファシズムの台頭と戦争の脅威が高まる現在、私たちに警鐘を鳴らしてくれるでしょう。

 

悲しみと哀れみ ―占領下にあったとあるフランスの街の記録

(フランス=スイス/1969年/249分/モノクロ/デジタル)

監督:マルセル・オフュルス 

1940年から1944年にかけてナチス・ドイツ占領下におかれた、フランスの中央部に位置する都市クレルモン=フェラン。ある者は抵抗運動(レジスタンス)に参加し、またある者は親独政権におもねることを選んだ。その暗い時間。その汚濁。そのヒロイズム。ユダヤ系の国会議員、元SSの志願兵、裕福なブルジョワ、農民、薬剤師、同性愛者のイギリス人スパイ、レジスタンスの闘士、協力者、ペタンを支持する者、共産主義者、ド・ゴール支持者など、さまざまな証人がある時は熱っぽく、またある時は慎重に、ためらいがちに、そして痛々しく語る。それら様々な証言へと切り込んでいく見事な編集によって、当時のありふれた日常に潜んでいた恐怖が信じられないほど私たちの身近に迫ってくる。

 

 

日本語字幕翻訳:手束紀子

素材制作協力:アテネ・フランセ文化センター

 

《製作について》

テレビ向けに制作されるドキュメンタリーを撮るため、1969年春、マルセル・オフュルスはヴィシーからほど近い地方都市クレルモン=フェランに赴く。国際アーカイブから収集した胸が張り裂けるような映像と、オフェルスと彼の映画製作パートナーであるアンドレ・アリスによる衝撃的で率直なインタビューから構成された『悲しみと哀れみ』は、それまでほとんど目を向けられることのなかった醜い真実と道徳的ジレンマに踏み込む。第二次世界大戦下のフランスの体験(隆盛を極めたフランス映画産業を含む)を年代順に追っていく本作は、占領下のクレルモン=フェランの住民たちを通じて、さまざまな立場の人々の声に耳を傾け、占領下の生活を多角的に探求する。複数の語り手たちの証言映像と既存映像とのモンタージュ、独創的な構図、印象的な演出を駆使し、政治的指導者たちの視点と農民、薬局の店主、レストランやホテルの経営者たち、ドイツ、イギリス、フランス出身の人々、それぞれの視点を並置する。こうして1939年から1945年にかけてのフランス社会を包括的に描き、唯一無二の魅力を放つこの肖像は、ドキュメンタリーの形式をおおきく変革することになる。

 

《公開からその後の評価まで》

1971年4月14日、『悲しみと哀れみ』はまず、カルチェ・ラタンの小さな映画館スタジオ・サン・セヴェランで、ごく限られた範囲での上映となった。その成功を受け、フランス国営放送協会による放映拒否をめぐるメディアの緊張感も相まって、口コミが爆発的に広がった結果、この映画は4月28日に2館目の映画館で上映され、その後すぐにフランス全土の他の映画館でも上映されるようになった。87週間にわたって上映され、約60万人の観客を動員した。フランスの集団的記憶のこれまで隠されていた側面に光を当て、ナチスという敵への抵抗で団結したフランスというド・ゴール支持者の神話を打ち砕き、占領時代に対するフランス人の見方を変え、歴史的衝撃として爆弾を投げかけた。本作はこうして少しずつ反響を呼び、論争とスキャンダルを巻き起こしながら、20世紀のフランス史に忘れがたい足跡を残し、大成功を収めた。

公式の検閲とは言えないものの、撮影から10年以上経った1981年10月28日、FR3で本作はようやく初めてテレビ放映された。1981年の大統領選挙キャンペーン中、将来の文化大臣となるジャック・ラングは、これを公共放送で放映することを約束したのだ。その日、2000万人の視聴者がこの番組を視聴した。

 

《マルセル・オフュルスや作品に寄せられた言葉》

「私のお気に入りの映画作家の一人がマルセル・オフュルスで、彼には大いなる敬愛の念をいだいている」フレデリック・ワイズマン

 

「わたしにとって、マルセル・オフュルスの作品は、映画というものの、ほとんど根本的とも言うべき局面と結びついています。すなわち映画との関係です。なるほど、映画というものの四分の三は、小さな物語を語っています。つまり、多少なりともよくできた、様々な小さな物語です。語るとしても、概して隠喩的なかたちで語るだけです。研究にしても、ルットマンやワイズマンのようなドキュメンタリー作家にしても同様です。彼らが語るのは、はっきりと限定された瞬間についたです。しかし、マルセルは大きな物語と小さな物語の二つを、同時に語ることに成功している。彼は偉大な歴史家です。なぜなら、偉大な映画作家は偉大なる歴史家でもあるからです」ジャン=リュック・ゴダール(福嶋勲訳『映画をめぐるディアローク ゴダール/オフュルス全対話』、読書人)

 

「『悲しみと哀れみ』は、アラン・レネの『夜と霧』(1956)とクロード・ランズマンの『SHOAHショア』(1985)の間に位置する映画的記念碑である」ジャック・マンデルバウム「ル・モンド」紙

 

「マルセル・オフュルスの1969年の大作ドキュメンタリー『悲しみと哀れみ』は、歴史の流れを変えたと言える数少ない映画の一つである。その神話に挑むことで、オフュルスは実際のレジスタンスがより一層反抗的で英雄的であったことを明らかにし、フランスの協力体制の根底にあった政治的病理——反ユダヤ主義、人種差別、反共産主義——を診断する。それらは当時もなおフランスに顕著に存在していた」リチャード・ブロディ、『ニューヨーカー』誌

 

「『悲しみと哀れみ』は闘争の映画であり、ド・ゴール主義とその歴史観に挑む戦争機械(machine de guerre)である」シルヴィ・リンドベルグ(歴史家)

  • 『悲しみと哀れみ』©Gaumont

  • 『悲しみと哀れみ』©Gaumont

  • 『悲しみと哀れみ』©Gaumont

  • 『悲しみと哀れみ』©Gaumont

  • 『悲しみと哀れみ』©Gaumont

  • 『悲しみと哀れみ』©Gaumont

    《上映スケジュール》

    10/4(土)14:00 上映後、剣持久木先生による講演あり
    講演タイトル:『悲しみと哀れみ』と抵抗神話の盛衰 −占領期フランスの映像表象をめぐって− 

     

    10/11(土)14:00 

     

    10/18(土)15:30

     

    10/26(日)12:00

     


    *第一部「崩壊」(121分)と第二部「選択」(127分)の間、15分の休憩あり

    登壇者

    剣持久木(けんもちひさき)

    1961年生まれ。静岡県立大学国際関係学部教授。専門はフランス現代史、歴史認識。
    主著に『記憶の中のファシズム−火の十字団とフランス現代史』(講談社、2008年)、
    『越境する歴史認識−ヨーロッパにおける「公共史」の試み』(岩波書店、2018年)。

    《マルセル・オフュルス 紹介》

    フランス/アメリカ合衆国のドキュメンタリー映像作家。1927年11月1日、フランクフルトで、著名な映画監督マックス・オフュルスと女優ヒルデガード・ウォールの間に生まれる。ユダヤ人家系として生地ドイツで暮らしていたが、ナチスの台頭を受けて、1933年に家族とともにフランス、パリへ亡命。さらに1940年のパリ占領を付けて、スペイン経由でアメリカに合衆国に家族で脱出。戦後、1950年にパリに戻り、大学で哲学を学んでいたが、学業を放棄し、映画業界に入り、ジュリアン・デュヴィヴィエ、アナトール・リトヴァクらの作品、そして1955年には父親の映画『歴史は女で作られる』でアシスタントにつく。ドイツのテレビ局でしばらく働いた後、2本の短編フィクション映画を制作し、1962年にはフランス映画『スケッチ』を制作。翌年、親友トリュフォーの助力もあり、初の長編映画『バナナの皮』を監督。ジャン=ポール・ベルモンドとジャンヌ・モローが主演するコメディで、復讐のために二人の悪徳保険会社を騙そうとする元カップルを描く。その後、フランス国営放送(ORTF)でドキュメンタリー番組の制作を始め、『ミュンヘン、あるいは百年の平和』でその後、彼が最もよく知られることになるジャンル、すなわち歴史ドキュメンタリー映画の礎を築く。転機は1969年に訪れる。この年、マルセル・オフュルスはスイステレビの依頼作品として制作した『悲しみと哀れみ』を完成させる。国際的に大きな反響を呼ぶ。1985年から1988年までの3年間をかけて、リヨンのゲシュタポ長官クラウス・バービーの歴史的な裁判を、容赦なく厳格に描いた傑作『ホテル・テルミニュス 戦犯クラウス・バルビーの生涯』でアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞、評価を決定的なものとする。1991年の『Novembertage – Stimmen und Wege』では、ベルリンの悲劇的な歴史と運命、そしてベルリンの壁崩壊後の最近の再統一までを振り返っている。1994年には、戦争時のジャーナリズムの歴史を描いた『Veillées d’armes』を制作。旧ユーゴスラビアでの悲惨な紛争とボスニアの悲劇を背景にした、3時間半にわたる長編ドキュメンタリーである。

    2012年にレジオン・ド・ヌール唱を授与され、同年、シネマテーク・フランセーズで特集上映が行われる。

     2025年5月24日、フランス南西部の自宅で死去、享年97歳。

    マルセル・オフュルス

    DEVENIR PARTENAIRE

    パートナーとして、協賛・寄附する

    日本におけるフランス文化の発信そして日仏文化交流をご支援してくださるパートナーを募集しています。

    S’IMPLIQUER À NOS CÔTÉS

    募集情報

    フランスに関わる様々な募集情報を掲載しています。