こども映画ワークショップ+『マッチ売りの少女』上映
こどもたち、若者たちが映画に触れる機会を作るべく全国的に活動しているフランスの映像教育協会Archipel des lucioles(アルシペル・デ・ルシオル ホタルの群島)からナデェージュ・ルレさんを迎え、ジャン・ルノワールのサイレント時代の傑作『マッチ売りの少女』上映し、本作の魅力、面白さについて語っていただきます。この作品の独特な世界を創り出すためにジャン・ルノワールが考案した撮影プロセスについて解説いただくほか、会場の皆さんからの質問や意見をお受けして、やり取りをさせて頂きます。
ワークショップの最後には、映画が発明される以前の投影装置や玩具を紹介し、実際にそうした装置に触れ、実験しながら、それらがどのように映画の発明へと結びついていったか探求してみましょう。(通訳付き)
【上映作品紹介】
マッチ売りの少女 La Petite marchande d’allumettes
(フランス/1928年/29分/サイレント/モノクロ/4Kレストア版)
出演:カトリーヌ・ヘスリング、ジャン・ストルム
ルノワールが幼年時代から親しんできたアンデルセンの童話をヴュー=コロンビエ劇場の屋根裏をスタジオに、特殊撮影のテクニックも取り入れ、映画的なアイディアを駆使して描いた作品。少女がマッチに火を灯して夢見る世界が幻想的に描かれ、”死“の使いから逃げようと馬で空を駆けるシーンや、山に埋葬されるシーンなど魅力にあふれている。主演は『水の娘』(24)『女優ナナ』(26)『チャールストン』(27)などで組み、当時ルノワールの妻でもあったカトリーヌ・ヘスリング。
「『マッチ売りの少女』(1928年)で、ジャン・ルノワールはアンデルセン童話を様々な技術を駆使して一本の素晴らしい映画へと変換した。(…)ルノワールは、ヴュー・コロンビエ劇場の屋根裏部屋で、演出家のジャン・テデスコと共に、反射板、加減抵抗器、木製の桶、展開用のフレームを作った。こうした技術的創造力が『マッチ売りの少女』全体に注ぎ込まれ、俳優たちは、一方向ミラーを使ったミニチュア・セットの写真の中に配置された。(…)ルノワールは最大限の効果を用い、夢のシークエンスにおいては数々のソフトフォーカスやオーヴァーラップが多用されている)」(シャルロット・ガルソン、「カイエ・デュ・シネマ」副編集長)
【ナデーシュ・ルレさんからのワークショップ紹介】
「1928年に製作されたジャン・ルノワールのサイレント映画『マッチ売りの少女』を鑑賞するこの機会に、シネマトグラフの発明に先立つ様々な発明品を見ていきます。映画の上映後、映画が発明される以前のさまざまな映像装置を探求します。マジック・ランタンから最初の光学玩具まで、最初の動画と、光による投影の原理がどのように生まれたかを見ていきます。
1659年に発明されたマジック・ランタンは、シネマトグラフの上映の200年以上前に開発された、白い面に映像を投影する最初の投影装置です。「ビュー」と呼ばれる画像は、レンズと光源の間に挿入されたガラス板に描かれていました。投影された映像は映写技師=口上師によって解説され、250年後のサイレント映画と同じように、しばしば音楽が伴われていました。
ワークショップの参加者の皆さんには、透明な紙に絵を描いて、それを小さな提灯を使って白い面に投影することで、自分だけの「ビュー」を作っていただきます。本物の弁士のようにライブでコメントすることもできます!
また19世紀には、動いて見える錯覚を再現しようとする数多くの光学玩具が発明され、これが動画の誕生へと繋がっていきました。このワークショップでは、参加者がこれらの光学玩具を実際に体験し、とりわけソーマトロープ(*)作りに挑戦していただきます」
* ソーマトロープ
ヴィクトリア朝時代に一般的だった玩具の一種。円板やカードの両面に絵を描き、2本の紐を取り付けます。紐を両側から持って素早く振り回すと、円板が回転することで両面の絵が交互に見え、残像現象によって1つの画像に見えます。割り箸などで円板を挟み、両手で竹とんぼの軸のように回転させる形状もあります。
映画教育専門家
ナデーシュ・ルレ
大学で映画製作を学んだ後、映画教育を専攻、以後、20年以上にわたり、ナデージュ・ルレは、幼児から高校生まで若い観客の開拓・育成・教育事業に携わる。映画教育関係の教材の出版を行い、子どものための映画館「ユルシュリーヌ」などいくつかの映画館で経験を経て、2013年には、子ども向けの映画の専門サイトBenshi.frを共同創設。現在はフランス全国で映画教育プラットフォームL’Archipel des lucioles(アルシペル・デ・ルシオール ホタルの群島)にて活動している。