座談会「映画批評の現在」 第6回映画批評月間

「道徳とはトラヴェリングに関わる事柄である」(リュック・ムレ)あるいは「トラヴェリングとは倫理の問題だ」(ゴダール、1959年)、「映画作家とは、撮影したものを判断し、その撮影方法によって判断されるものである」(リヴェット、1961年)、「すべての映画は、撮影の記録である」(リヴェット)、こうしたヌーヴェル・ヴァーグの批評家=映画作家たちの言葉は、少なくとも三世代にわたって、フランスをはじめ、世界中の映画愛好家たちにとって、映画観を構築し、「良質の伝統」を否定し、より反逆的な現代性を支持するための指針となってきました。しかし、60年近くが経った今、映画は新たな批評の道標を求めています。
つねに既成の規範に挑戦し続ける批評は、一本一本の映画と共にリスクを背負って進んでいく現在進行形の作業であると言えるでしょう。では#MeToo運動以後、映画史の再考が求められ、またインターネットを通じて個人が気軽に情報発信・共有できるSNS時代、映画における批評の役割、その可能性はどのように変化しているでしょうか。
ヌーヴェル・ヴァーグの映画作家たちが批評家として活躍していたフランスの老舗映画雑誌「カイエ・デュ・シネマ』の現副編集長フェルナンド・ガンゾさん(オンライン)、日本で現在もっとも忙しく活躍し、多くの作り手や映画関係者から信頼される映画ライター、月永理絵さんをお迎えして「現在の映画批評」について議論します(通訳付き)。
登壇者
フェルナンド・ガンゾ Fernando GANZO

『カイエ・デュ・シネマ』誌副編集長。
2008年にスペインの映画雑誌『リュミエール』を共同創刊。その後、フランスに渡り、映画雑誌『So Film』の編集長を務める。2020年より現在に至るまで『カイエ・デュ・シネマ』誌の副編集長を務める。サム・ペキンパー、ジャック・ターナー、レオ・マッケリー、ジョージ・キューカーについての複数の執筆者による批評集の編者でもある(すべてCapricci出版社)。

登壇者
月永理絵(つきなが りえ)

映画ライター、編集者。 『朝日新聞』『週刊文春』『CREA.web』

司会
坂本安美(さかもと あび)

アンスティチュ・フランセ映画主任。『カイエ・デュ・シネマ・ジャポン』誌元編集委員。1996年より東京日仏学院(アンスティチュ・フランセ)にてさまざまな映画上映の企画・運営を手がける。著書に『エドワード・ヤン 再考/再見』、『そして映画館はつづく』(共著、フィルムアート社)、『サッシャ・ギトリ 都市・演劇・映画 増補新版』(梅本洋一著/坂本安美編、ソリレス書店)などがある。
