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講演会

〈知られざるヌーヴェル・ヴァーグ、リュック・ムレ特集〉第6回映画批評月間

〈知られざるヌーヴェル・ヴァーグ、リュック・ムレ特集〉第6回映画批評月間

日程

2025年6月6日(金)〜7月19日(土)

会場

東京日仏学院エスパス・イマージュ

料金

一律1,100円。チケットはPeatixにて発売中。

「リュック・ムレは、ブニュエルとタチの両者を継承するおそらく唯一の存在だ。」ジャン=マリー・ストローブ(映画作家)

「ムレはブレヒトによって見直され、修正されたクールトリーヌである」。ジャン・リュック・ゴダール

ヌーヴェル・ヴァーグ唯一のバーレスク映画作家であり、フランスをはじめ世界的にカルト的な人気を誇るリュック・ムレを特集します。コメディ、冒険活劇、西部劇、日記、ロードムービー、犯罪映画、そしてカップル、地理、文学作品を題材にした作品など、あらゆるフォーマット、あらゆるジャンルで38本の映画を生んできたユニークな作家の世界をまずは7本の長編映画と8本の短編・中編映画、そして専門家によるレクチャーによってリュック・ムレの世界を発見しましょう! 

プロフィール

リュック・ムレ

リュック・ムレ Luc Moullet
1937年パリ生れ。18歳で「カイエ・デュ・シネマ」に映画批評を寄稿し始め、フラーやウルマーらのB級映画を熱烈に擁護。名著『俳優主義』やブニュエル、フリッツ・ラング、キング・ヴィダーについてのモノグラフを発表。1960年からは映画監督、1966年からは俳優、そしてプロデューサー(自身の作品だけでなく、ユスターシュやデュラスの作品も)として活動。1965年に『ブリジットとブリジット』で長編デビュー。以後『密輸業者たち』『ビリー・ザ・キッドの冒険』他、傑作が続くが、1980年代に入ってからは短編製作に力を注ぎ、長編は『労働喜劇』(1988年、ジャン・ヴィゴ賞)と「パルパイヨン」(1992年)のみだったが、2000年代に三本の長編を次々に完成。2009年ポンピドゥーセンター、2021年にはシネマテーク・フランセーズにて回顧上映が開催されている。

 

「私は天才音楽家の弟であり、5歳でその道を選んだ美しい天文学者の父であり、村長、村長夫人、村長(ヤギを8メートル移動させた)を殺した男の11番目のいとこであり、52年間私を我慢してくれたたバランスの取れた魅力的な女性の夫である。私はハイブローで、レニー(『二十日鼠と人間』)である。トリュフォーのおかげで65年間映画について書いてきたし、ゴダールのおかげで54年間、真面目なテーマ、マルクス主義とテイラー主義(科学的管理法)、ヴァギナとクリトリスについて人々を笑わせる映画を作ってきた。私はあらゆるジャンルの映画を作ってきた。私についてなにか残るとしたら、「道徳とはトラヴェリングに関わる事柄である」という言葉ぐらいだろう。人々は私をブレヒトとクールトリーヌの間、ブニュエルとタチの間に位置づける。私はアルプス山脈の手前にある田舎町出身の破天荒な人間で、標高5,390メートルの地点で自転車に乗れるマラ田舎町から来た破天荒な人間で、標高5,390メートルで自転車に乗れるマラソンランナーだが、スキーもダンスも水泳も車の運転もできない」(リュック・ムレ)

【長編作品】

ブリジットとブリジット 


(フランス/1966年/75分/モノクロ)
出演/フランソワーズ・ヴァテル、コレット・デコンブ
ピレネー出身の女の子とアルプス出身の女の子が上京したパリで偶然出会う。同じ名前を持つふたりは意気投合し、一緒に大学生活を満喫しようとするのだが……。長編デビューとなる本作で、ムレは首都に到着した瞬間から、自分の生い立ちを忘れ、見知らぬ世界で受け入れられるために規範に従わなければならない若者たちを観察する。フラー、ロメール、シャブロルらが友情出演。ゴダールに「真に革命的な映画」と讃えられ、イエール映画祭で審査員特別賞を受賞した。

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    密輸業者たち 


    (フランス/1967年/81分/モノクロ)
    出演:フランソワーズ・ヴァテル、モニーク・ティリエ
    架空の国境地帯で「現代に残された最後の冒険=密輸業」に携わるひとりの男とふたりの女の三角関係と、彼らを摘発しようとする「密輸業組合」と「税関」との三つ巴の攻防が、荒寥とした山岳地帯を背景にコミカルに描かれていく。ムレは思い入れのある南アルプスの山岳地帯を舞台に、人々が単調な日常生活を放棄して危険の嗜好を試す冒険に満ちた追跡劇を想像する。自らが愛する風景の優れた観察者であるムレは、広々とした空間を歪めることなく、一貫性を持たない筋書きと完璧に調和させながら、見事に引き立てている。

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      ビリー・ザ・キッドの冒険

      (フランス/1971年/78分/カラー)出演/ジャン=ピエール・レオー、ラシェル・ケステルベール
      たったひとりでウェルズ・ファーゴの駅馬車を襲ったビリーは、戦利品を運ぶのに苦労する。そんな時、ビリーはアンと出会う。ムレはハワード・ホークスを進んで参照しながら、砂漠、断崖、山道を舞台に、少人数のクルーとわずか6日で唯一無二のシュールな西部劇を撮り上げる。まさに感覚的探求の場に放たれ、愛、欲望、共感を発見していく主人公を演じるジャン=ピエール・レオは、この多義的な側面を持つキャラクターによって、それまで演じてきた役やイメージから離れて、俳優としてのあらたな可能性を示している。編集はジャン・ユスターシュが担当。

      「『密輸業者』はすでに傑出した映画だったが、『ビリー・ル・キッドの冒険』は、ジャン=ピエール・レオー出演作の最高傑作であり、また稀有なるフランスのシュルレアリスム映画のひとつである。リュック・ムレは間違いなく、ブニュエルとタチの唯一の後継者だ」ジャン=マリー・ストローブ

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        カップルの解剖学


        (フランス/1976年/82分/モノクロ)
        出演/リュック・ムレ、クリスティーヌ・エベル
        映画監督とそのパートナーが、女性解放運動に影響され、ふたりのカップルとしての関係の難しさを分析し始める。ドキュメンタリーとフィクションの中間に位置する本作は、ムレとパートナーのアントニエッタ・ピゾルノの初の共同監督作品。ムレはこの自伝的作品で自分自身を演じているが、ピゾルノは自分の役をあえて「ビリー・ザ・キッドの冒険」でヒロインを演じたラシェル・ケステルベール(変名でクレジット)に譲っている。本作は、カップルの親密さ、無秩序、異なるニーズを共存させることの難しさについて率直に語るとともに、性の解放が謳われながらも、軽視されがちだった女性の快楽について繊細な探求をしている。

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          食事の起源 


          (フランス/1979年/115分/モノクロ)
          出演:リュック・ムレ、アントニエッタ・ピゾルノ

          ムレは自分が口にする食べ物の原産地に疑問を抱き、消費から生産までの連鎖をたどって調査することにする。食料生産に携わるフランスと低開発国の労働者の比較を通じて、搾取しているのは資本家ばかりとは限らないという真実が明らかになる。モノクロ映像を生かして、茶目っ気たっぷりのジャブを挟みながら、眠っている良心を目覚めさせ、観客に自分たちでも行動を起こせることを気づかせる本作、最後には、批判の眼は自らの映画作りに向けられる。

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            労働喜劇 


            (フランス/1988年/88分/カラー)
            出演/サビーヌ・オードパン、ロラン・ブランシュ、アンリ・デウス

            職業斡旋所に勤めるフランソワーズは、失業中の男性に恋をする。彼女は彼に仕事を見つけるためにあらゆる手を尽くすのだが、実は男は「プロの失業者」だったことで悲喜劇に…。前作『食事の起源』から9年後、ムレは仕事の世界に飛び込み、失業という複雑なテーマに挑み、過度に重要視されるネットワークからヒエラルキーの不条理まで、不平等なシステムを永続させる悲劇的な現実をあざ笑ってみせる。ヒロインのサビーヌ・オードパンは、以後、ムレ作品の常連となる。ジャン・ヴィゴ賞受賞。

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              ルート17の遭難者たち 

              (フランス/2001年/81分/カラー)
              出演:パトリック・ブシテー、イリアナ・ロリック、サビーヌ・オードパン、マチュー・アマルリック、ジャン=クリストフ・ブーヴェ
              湾岸戦争中、カーラリーのチャンピオンとその若い副ドライバーは、アルプ=ド=オート=プロヴァンスの人里離れた道で立ち往生する。そこで彼らは、宇宙物理学者、羊飼い、兵士たちと出会い、一見したところ平和な場所を発見するのだが…。エルンスト・ルビッチの『山猫リュシカ』やセシル・B・デミルの『昨日への道』にインスパイアされたムレは、限界ぎりぎりの奇妙な主人公たちの対立と、激化する湾岸戦争の間に大胆な平行線を描く。

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                【短編作品】


                焼け過ぎのステーキ 

                 (フランス / 1960 / 19分/モノクロ)
                つつましい食事をめぐって繰り広げられる姉と弟の喧嘩。実の弟アルベール・ジュロス(本名パトリス・ムレ)と、『ブリジットとブリジット』のヒロインのひとりフランソワーズ・ヴァテルと、ミニマルなセットで驚くほど自由な形式とテーマの初監督作品を発表。

                黒い大地

                (フランス / 1961 / 19 分/カラー)
                道路がなく、この世からほとんど消滅しようとしているピレネー山脈のマンテとアルプスのマリオーのふたつの村を探訪する。題材の深刻さと短編映画の遊び心との間に楽しいコントラストを生み出している。

                地下鉄の改札 

                (フランス/ 1983 / 15 分/カラー)

                地下鉄の改札を通るためのありとあらゆる方法を紹介するバーレスクな語り口のスケッチ集。

                メドールの帝国

                (フランス / 1986 / 13分/カラー)
                犬、その飼い主、擬人化:都会における人間の親友の居場所についての辛辣な考察。

                開栓の試み

                (フランス / 1988 / 15分)
                キャップがどうしてもあかない時、どのようにコカ・コーラのボトルを開けるか。

                映画館の座席

                (フランス / 1989 / 57分/カラー)
                出演:オリヴィエ・マルティニ、エリザベト・モロー、サビーヌ・オードパン
                1955年、パリ。『カイエ・デュ・シネマ』誌の批評家ギィは、地元の映画館にヴィットリオ・コッタファヴィの映画をよく観に行く。そこで敵対する雑誌『ポジティフ』の批評家ジャンヌと恋に落ちるのだが……。シネフィルの日常が痛快に描き出される。

                ウニの陰謀La Cabale des oursins (フランス/ 1990 /17分/カラー)
                北フランスのぼた山が、コロラド州のグランドキャニオンやエジプトのピラミッドと同じように、観光名所とみなされたらどうだろう?地理をこよなく愛するムレがフランスを旅する。

                ロングスタッフ氏の亡霊

                (フランス/ 1996 / 20分/カラー)
                出演:イリアナ・ロリック、エレーヌ・ラピオヴェル、ジェフリー・キャリー
                原作:ヘンリー・ジェイムズ短編集『ロングスタッフの結婚』
                1880年、ノルマンディーの浜辺で、喘息で瀕死の裕福なイギリス人が、若く美しいアメリカ人女性と出会い、恋に落ちる。彼女は彼を拒絶するが、2年後、彼は再び現れる……。綿密なフレーミングと洗練された演技でヘンリー・ジェイムズの世界を見事に描き出す。

                • 焼け過ぎのステーキ ©DR

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                  【トークイベント】

                  6月8日(日)15:00〜16:30   

                  映画のアトリエ「リュック・ムレ、あるいは乏しさの詩学」

                  講師:葛生賢

                  リュック・ムレが「カイエ・デュ・シネマ」で映画批評家としてデビューした時、主な映画作家たちは既に先輩批評家によって「発見」されていた。だから彼ができたのは、彼らが取りこぼしたB級映画作家を丹念に「落穂拾い」することだった。しかしB級映画を通して、ムレは映画製作の根底にある経済的問題を自覚せざるを得なくなる。ヌーヴェル・ヴァーグの主な映画作家たちと後発の彼を分かつものは、その自覚の有無である。乏しい経済的条件はいやでも画面の表層に刻印される。しかしそんな条件でも、いや、だからこそ何が可能なのか。ムレのフィルモグラフィを辿りながら、その「乏しさの詩学」について考えてみたい。(葛生賢)
                   

                  講師

                  葛生賢(くずう・さとし)

                  1970年生まれ。映画作家・映画批評家。
                  主な監督作品に『吉野葛』(2003)、『火の娘たち』(2006)など。
                  主な論考に溝口健二論、F・W・ムルナウ論、ロベール・ブレッソン論、青山真治論など多数。

                  【上映プログラム・スケジュール】

                  ★プログラム1 黒い大地(19分)+ ブリジットとブリジット(75分) 計94分

                  上映日:

                  プログラム2 食事の起源(113分)

                  上映日:

                  プログラム3 開栓の試み(15分)+ カップルの解剖学(82分) 計97分

                  上映日:

                  プログラム4 ウニの陰謀(17分)+ビリー・ザ・キッドの冒険(77分)計94分

                  上映日:

                  プログラム5 地下鉄の改札(15分)+労働喜劇(88分)計103分

                  上映日:

                  プログラム6 焼け過ぎのステーキ(19分)+密輸業者(80分)計99分

                  上映日:

                  プログラム7 メドールの帝国(13分)+映画館の座席(57分)+ロングスタッフ氏の亡霊(20分)計90分

                  上映日:

                  プログラム8 ルート17の遭難者たち

                  上映日:

                   

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