第7回「哲学の夕べ」ー アニマリティ/ 動物
日程
2019年5月25日
会場
東京日仏学院
入場
無料・飲食有料
哲学者エリザベート・ド・フォントネは20年前の著書『動物たちの沈黙』において、哲学を動物に関する問題にまで拡大させ、私たちと動物の関係についての新たな考察への道を切り開きました。これまで動物は、言葉を話せる動物、考える動物、社会的な動物、笑う動物、というように私たち人間を定義するものでした。しかし科学の進歩は、人間と動物の差異を縮め、人間をしだいに動物の世界に組み入れるようになったのです。
動物の搾取や大量屠殺が行われ続けている今、動物の問題は政治や環境にも関係するようになり、私たちを取り巻く生き物との関係を考えることが喫緊の課題となっています。長い歴史の中でともに生き、あらゆる意味において私たちの糧となっている動物と、このような産業的な関係を続けてもよいのでしょうか。これらの問題に、動物の問題とポリティカル・エコロジーを専門とする哲学者コリーヌ・ぺリュション、さらに人類の歴史を通して「人間の善き友人」を描いた『犬たち』の著者であるマルク・アリザールがアプローチします。串田純一は、動物の世界についてのハイデガーの概念を問い直し、千葉雅也と串田のテーゼについて議論します。またワークショップや金川晋吾による写真展、音楽と美食をミックスしたジル・スタッサールのパフォーマンスは、別の角度から動物の問題に焦点を当てます。
アンスティチュ・フランセ東京の敷地を散策しながら楽しめる「哲学の夕べ」。講演会や展示、パフォーマンスを通じて、動物の視点から哲学にアプローチしてみましょう!
プログラム
展覧会
金川晋吾『同じ別の生き物』
5月23日(木)〜6月30日(日) | ギャラリー
※5月23日19時よりオープニングレセプションを開催します。
第7回「哲学の夕べ」の一環として、2010年に三木淳賞、2018年にさがみはら写真新人奨励賞を受賞し、2016年に出版した写真集『father』でも注目を集める新進気鋭の写真家、金川晋吾氏による展覧会『同じ別の生き物』を開催いたします。
他者としての動物とのあいだで交わされるまなざしについて再考し、人間と動物との関係を問い直すことを試みます。
アーティスト
金川晋吾
写真家。1981年生まれ。神戸大学卒業。東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻博士後期課程修了。青幻舎より『father』出版。主な個展に、2018年「長い間」(横浜市民ギャラリーあざみ野)、グループ展に、2015年「STANCE or DISTANCE? わたしと世界をつなぐ「距離」」(熊本市現代美術館)、等がある。
映画
ロベール・ブレッソン監督『バルタザールどこへ行く』
11時〜12時35分 | エスパス・イマージュ
(1966年/95分/モノクロ/フランス=スウェーデン/デジタル/フランス語、日本語字幕付)
ピレネーの小村でロバの子が生まれる。農園主の息子ジャックと幼馴染のマリーはバルタザールと名付けて可愛がる。やがてジャックの一家の引っ越しによってバルタザールもよそへ引き取られる。それから10年後、鍛冶屋で酷使されていたバルタザールが逃げ出してたどり着いた先は、美しく成長したマリーの住む元の農園だった。無垢なロバの過酷な生涯が一人の少女の運命と重ね合わせながら描かれる。巨匠ブレッソンの美学に貫かれた傑作映画。
講演会/対談
講演:串田純一『人間は動物に世界を貸し付ける』
14時〜15時 | エスパス・イマージュ
使用言語:日本語
動物と人間を巡る思考において「動物は世界が貧しい」というハイデガーのテーゼは重要な役割を演じてきた。デリダはここに人間中心主義を疑ったが、それは避けられないことであり、問題はむしろ、この避け難さと限界が十分露わにされていないという点にある。人間は自らの世界を動(植)物にいわば貸し付けなければそれらを理解することも世界を保つこともできないが、経済や科学の要請によりしばしばこの世界を改めて奪い返し、その際に貧しいという見かけが生じる。そしてこれこそが人間の有限性であり、その逆説的な動物性なのではないか。
対談:串田純一×千葉雅也
15時30分〜16時30分 | エスパス・イマージュ
使用言語:日本語
立命館大学准教授、哲学者。1978年生まれ。パリ第10大学および高等師範学校を経て、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『動きすぎてはいけない―ジル・ドゥルーズと生変化の哲学』、『別のしかたで―ツイッター哲学』、訳書にカンタン・メイヤスー『有限性の後で―偶然性の必然性についての試論』(共訳)がある。
講演:マルク・アリザール『犬になる』
17時〜18時 | エスパス・イマージュ
使用言語:フランス語、同時通訳付き
犬を恥ずべき狼として描いたラ・フォンテーヌの寓話から、犬たちを「動物界の恥」としたジル・ドゥルーズ「アベセデール」まで、人間はこの生き物に奇妙なやり方で敬意を払う。もっとも犬は人類の「最良の友」とも呼ばれているのだが。動物界における犬の特別な地位はどこから来たのだろうか。人間の動物愛の限界について考えることで何が得られるだろうか。自然に反した動物としてではなく別の方法で犬を捉えることはできるだろうか。これらの問いについて『犬たち』の著者が考察する。
※マルク・アリザールは、5月18日に日仏会館・フランス国立日本研究所にて講演会を行います。
講演:コリーヌ・ペリュション『我々と動物との関係、あるいは私たちの正義の試練について:倫理、政治、文明の問題』
19時30分〜20時30分 | エスパス・イマージュ
使用言語:フランス語、同時通訳付き
動物に対する暴力は、道徳の問題のみならず、正義の問題でもある。暴力は、環境および社会規模の重大な反生産性を生み、人間の衰退を招く開発モデルの異常を反映している。人類学、倫理、政治哲学で構成された本アプローチは、動物の問題を深掘りしながら、告発から提案への移行を提示する。
※コリーヌ・ペリュションは、5月24日に慶應義塾大学にて、5月27日に同志社大学にて講演会を行います。
対談:コリーヌ・ペリュション×串田純一
20時30分〜21時30分 | エスパス・イマージュ
使用言語:フランス語・日本語、同時通訳付き
哲学者
串田純一
1978年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。早稲田大学、慶應義塾大学、東洋大学非常勤講師。専門は哲学。 著作に『ハイデガーと生き物の問題』、訳書に、スティーヴン・レヴィン編、サイモン・クリッチリー&ライナー・シュールマン『ハイデガー『存在と時間』を読む』などがある。
哲学者
千葉雅也
立命館大学准教授、哲学者。1978年生まれ。パリ第10大学および高等師範学校を経て、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『動きすぎてはいけない―ジル・ドゥルーズと生変化の哲学』、『別のしかたで―ツイッター哲学』、訳書にカンタン・メイヤスー『有限性の後で―偶然性の必然性についての試論』(共訳)がある。
哲学者
マルク・アリザール
フランスの様々な文化機関で働く。5年前より哲学、神学、政治、情報科学に関するより個人的な仕事に専念する。2019年5月「犬たち」邦訳が法政大学出版局より刊行予定。
哲学者
コリーヌ・ペリュション
哲学者、パリ東大学 マルヌ・ラ・ヴァレ教授。政治哲学および応用倫理学(生命倫理学、動物倫理学、環境倫理学)を専門とする。著書『Les Nourritures』の邦訳が今年出版予定。
哲学アトリエ
トリスタン・ブリュネ「昆虫と人間」
15時〜16時30分|メディアテーク
参加無料
使用言語:日本語、フランス語
トリスタン・ブリュネ
パリ第七(パリ・ディドロ)大学博士課程。アンスティチュ・フランセ東京、白百合女子大学非常勤講師。
堀茂樹による哲学・ワークショップ
18時〜20時|201教室
参加費:1,000円 予約 Peatix
使用言語:日本語
堀茂樹
慶應義塾大学名誉教授。専門はフランス思想と文学。アンスティチュ・フランセ東京講師、市民の勉強会「オイコスの会」共同代表。小説家アゴタ・クリストフ(『悪童日記』他)や人類学者エマニュエル・トッドの翻訳者としても知られている。
パフォーマンス
ジル・スタッサール&ミサレ・レゲス・ムレタ『ソニック・バーベキュー』
18時30分〜19時30分 |中庭
「鉄板焼き」は、人間と火の原始的な関係性や、狩猟によって糧を得なければならないこと、音楽やダンスを介したあらゆる儀式の中心で、動物が重要な位置をしめていることを想起させます。鉄板焼きを使った五感を刺激する多感覚的なライブパフォーマンス。
ジル・スタッサール
作家、料理家、造形芸術と食の融合を探求するアーティスト。カルティエ現代美術財団のイベントのキュレーションを行う。著作に『Grise fiord』(2019年、Le Rouergue社刊)などがある。
ミサレ・レゲス・ムレタ
アディスアベバの「エチオ・ジャズ」のニューシーンを代表するエチオピア人パーカッショニスト。
beet eat ジビエカレー&ヴィーガンカレー
提供時間:12時〜21時30分 |中庭
ジビエカレー&ナチュールのニューアドレス、世田谷「beet eat」。
オーナーの“女猟師”竹林久仁子さんが自ら仕留めた「ジビエカレー」をナチュラルなワインとともに味わって。ヴィーガン派のマストイート、「ヴィーガンカレー」も見逃せない!ナチュラルワインインポーターがプッシュする注目アイテムもエンジョイ!
スペシャル・トーク
ジル・スタッサールと竹林久仁子によるトーク『狩猟文化について』
20時〜21時 |中庭
日本とフランスの狩猟文化や歴史についてのトーク。
竹林久仁子
料理研究家。Beet Studio主宰。2014年に第一種銃猟免許を取得。2016年、自分も食べられるジビエを提供することをコンセプトにした「beet eat (ビートイート)」を開店。
※プログラムは都合により変更されることがありますのでご了承下さい。変更のお知らせ、プログラムの詳細はアンスティチュ・フランセ東京のホームページをご覧下さい。